外科

診療科の特徴

 食道から肛門までの全ての消化管、肝胆膵脾疾患、ヘルニア(食道裂孔、腹壁、鼠径部など)、乳腺、甲状腺、下肢静脈に関する疾患を主に手術で治療します。
 内視鏡外科手術(胸腔鏡、腹腔鏡手術)に力を入れています。日本内視鏡外科学会の技術認定医が複数在籍しており高度な医療技術の提供を行っております。
 埼玉県指定の「がん診療指定病院」として安全で質の高いがん診療を提供しています。胃癌、大腸癌を始め、食道、肝臓、胆嚢、膵臓など全ての消化器がんに対して、消化器内科、放射線科と共同して 手術、化学療法、カテーテル治療を駆使し患者さん、病気の状態に合わせた治療を行っております。化学療法は、 術前・術後一貫して外科医が行うようにしております。
 外科部門を臓器、専門領域別に5人の科長がそれぞれの領域に責任を持ち、かつ横断的に協力して個々の患者さんに最適な治療を提供できるよう最善を尽くしております。
 休日・夜間も常に2名のオンコール体制をとり365日、24時間、腸閉塞・消化管穿孔・腹膜炎・急性虫垂炎など腹部救急疾患の緊急手術ができる体制をとっております。
 日本医科大学、帝京大学より定期的に医員が派遣されております。両大学とは外科専攻医プログラムも組み、専攻医の研修施設となっております。
【食道】食道外科専門医が手術を行います。2013年から開始した胸腔鏡手術は傷口小さく肺への負担も少なく出来ます。抗がん剤治療を組み合わせた治療も行っています。
【胃・大腸】がんの状態にもよりますが胃がんでは65%、大腸がんでは57%に腹腔鏡手術を行っています。高度進行癌に対しては抗がん剤治療を組み合わせ、がんを小さくさせてから手術を行います。
【膵・胆道】胆石や慢性胆嚢炎に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術から膵臓腫瘍や胆道がんに対する膵頭十二指腸切除術、膵体尾部切除術を行っています。切除困難・不能症例に対しても抗がん剤治療を行い予後改善に努めています。
【肝】肝臓専門医が在籍しております。原発性肝臓がん、転移性肝がん、胆管がんの治療を行っております。
【一般外科】低侵襲な腹腔鏡手術を積極的に行っています。急性虫垂炎では94%、胆石・胆嚢炎では96%、鼠径部ヘルニアでは56%を腹腔鏡手術で行っております。
【乳腺】さいたま市の乳がん健康診査実施医療機関です。市の乳がん検診で異常があればそのまま精密検査を行いスムーズかつ迅速に手術を行います。

医師

詳細な資格はこちら

塩谷 猛

副院長
日本外科学会外科専門医
日本消化器外科学会消化器外科専門医
日本大腸肛門病学会大腸肛門病専門医
日本消化器病学会消化器病専門医
日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医
日本肝臓学会肝臓専門医

小峯 修

外科診療副部長

日本外科学会外科専門医

日本消化器外科学会消化器外科専門医

日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医
日本消化器病学会消化器病専門医

山田 太郎

乳腺・内分泌外科科長
日本外科学会外科専門医

南部 弘太郎

肝胆膵外科科長
日本外科学会外科専門医
日本消化器外科学会消化器外科専門医
日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医

渡邉 善正

下部消化管外科科長
日本外科学会外科外科専門医
日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医

渋谷 肇

一般外科科長
日本外科学会外科専門医
日本消化器外科学会消化器外科専門医

島田 竜

外科医長

日本外科学会外科専門医

日本消化器外科学会消化器外科専門医

日本大腸肛門病学会大腸肛門病専門医

安康 勝喜

外科科員

日本外科学会外科専門医

 

日本医科大学付属病院より派遣

池畑 泰行

外科科員

 

帝京大学医学部附属病院より派遣

認定施設

  • 日本外科学会 外科専門医制度修練施設
  • 日本消化器外科学会 専門医修練施設
  • 日本大腸肛門病学会 認定施設
  • 日本消化器病学会 認定施設
  • 日本消化器内視鏡学会 指導施設
  • 日本がん治療認定医機構 認定研修施設
  • 日本消化管学会 胃腸科指導施設

診療実績

さいたま市民医療センター・外科 2022年度(令和4年)手術統計
臓器 疾患 術式 内視鏡外科
食道 食道良性   0 0
食道癌 食道亜全摘 1 1
1 1
胃十二指腸  胃癌    幽門側切除 22 15
噴門側切除 2 2
胃全摘切除 2 1
胃腸吻合、試験開腹 5 4
 GIST   2 2
潰瘍  大網充填 4 0
37 24
小腸・大腸  虫垂炎  虫垂切除 67 66
腸切除 3 2
小腸腫瘍、癌 腸切除 0 0
結腸癌 切除 67 44
直腸癌 低位前方切除術 14 14
Miles, Hartmann 5 3
 腸閉塞・腸穿孔 バンド、腸切除 19 9
ストマ造設 17 10
人工肛門形成状態 ストマ閉鎖 8 1
その他(良性)   4 2
  204 151
肛門  痔核   21 0
痔瘻   8 0
肛門狭窄 SSG、LSIS 6 0
直腸脱   3 0
その他(膿皮症、毛巣洞)   1 0
  39 0
肝胆膵  胆石・胆嚢炎  開腹胆摘 2 0
腹腔鏡胆摘 112 112
 膵臓癌 膵頭十二指腸切除 3 0
その他(DP) 1 0
 胆管癌 膵頭十二指腸切除 3 0
 胆嚢癌 拡大胆嚢摘出 1 0
肝癌  部分切除 2 0
葉切除、区域切除 1 0
RFA 0 0
  129 114
ヘルニア  鼡径   101 57
大腿   4 2
閉鎖孔ヘルニア   0 0
腹壁ヘルニア(臍含む)   4 2
小児   0 0
その他(尿膜管遺残など)   4 4
  113 65
下肢静脈瘤 高位結紮   0 0
抜去   0 0
  0 0
乳腺   75 0
良性   0 0
  75 0
甲状腺   4 0
良性   0 0
  4 0
その他 リンパ節生検   18 0
皮下・軟部腫瘤   2 0
後腹膜臓器   0 0
その他の腹腔内臓器   4 1
CVポート   16 0
  40 1
 合計 642 356
緊急     125  
全身麻酔     589  

一般外科

鼠径ヘルニア(鼠径、大腿、閉鎖孔ヘルニアなど)、腹壁ヘルニア、難治性褥瘡なども扱っております。

鼠径ヘルニア

鼠径ヘルニアの手術は小児に対してはポッツ法を、成人に関しては主にメッシュ(人工膜)を用いたテンションフリー手術を行っていますが状況に応じてiliopubic tract repair※などメッシュを入れない治療を行うこともあります。また症例により積極的に腹腔鏡による修復術を行っております。

※ポッツ法とは:小児の鼠径ヘルニア手術の代表的術式で、単純高位結紮と末梢ヘルニア嚢の開放を行います。
※テンションフリー手術とは:弱くなった筋肉にメッシュという人工の網(ポリプロピレン製)をあてて補強をします。術後の「つっぱり」感が少ない方法です。
※iliopubic tract repairとは:そけい部の筋肉を縫い縮めることで弱くなった筋肉の補強をします。

褥瘡(床ずれ)

寝たきりの患者さんの背中やかかとに褥瘡がみられることがよくあります。
外科的処置だけでなく栄養管理や体圧管理など、看護師、薬剤師、栄養士及び理学・作業療法士とチームを作り退院後の生活への支援を含めた全人的な医療を行っております。

上部消化管外科 (食道、胃及び十二指腸)

外科で扱う疾患としては食道癌、食道裂孔ヘルニア、食道アカラジア、胃癌、GIST(粘膜下腫瘍)、胃・十二指腸潰瘍穿孔、十二指腸乳頭部癌などがあります。
当院では適応を決めて、食道癌に対して、胸腔鏡・腹腔鏡手術、胃癌や胃粘膜下腫瘍には腹腔鏡下手術を行っております。

食道疾患

食道がん

食道がんの標準治療は、手術、抗癌剤治療、放射線治療を組み合わせた集学的治療が一般的です。
当科では「食道がん治療ガイドライン」に準拠し、病気の進行度に合わせた、最も適した治療法を選択しております。

手術

早期がんに対しては、消化器内科と連携し内視鏡的粘膜切除術を行い、内視鏡治療の適応とならない早期がんや進行がんには開胸、開腹手術だけではなく、胸腔鏡・腹腔鏡手術を積極的に行っております。
胸腔鏡・腹腔鏡手術は、従来の開胸・開腹手術と比べて、患者さんへの侵襲が少なく、早期回復が利点であり、今後益々発展する術式と思われます。
当科では根治性と低浸襲性の両立を目標に、患者さんにとって最善の治療を目指しております。

※低侵襲とは:手術に伴う痛み、出血などをできるだけ少なくするため、体に対する侵襲度が低い内視鏡医療機器を用いた医療のこと。患者さんの体への負担が少なく、回復も早くなる。

化学療法

術前・術後の補助化学療法ならびに切除不能食道癌に対する化学療法を、入院あるいは外来で行っております。

放射線治療

近隣の放射線治療施設と提携し、放射線治療単独あるいは放射線化学療法を行っております。

緩和ケア

外科だけではなく、緩和ケア認定看護師、薬剤師、栄養士などによる緩和ケアチームによる介入を行い、患者さんにとって最善の緩和ケアを目指しております。

良性疾患

粘膜下腫瘍や食道裂孔ヘルニア、食道アカラシアなどの良性疾患に対する外科治療も行っております。
症例に応じて積極的に胸腔鏡・腹腔鏡手術を行っておりますのでお気軽にご相談ください。

※食道アカラシアとは:食道から胃に移行する部分、すなわち食道胃接合部が嚥下(えんげ)(飲みくだす)によっても弛緩(しかん)しないため、食道が拡張する病気です。

胃・十二指腸疾患

胃がん

手術

胃がんに対しては「胃がん治療ガイドライン」に準拠した治療を行っており、早期がんは、消化器内科と連携し内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を行い、また内視鏡切除の適応とならない早期がん症例に対しては、腹腔鏡(補助下)胃切除術を積極的に行っております。
進行がんでは開腹手術をがんの進行状況に応じて選択しております。
開腹手術においても、個々の患者さんに応じて縮小手術、機能温存手術、拡大根治術を選択し、根治性と低侵襲性の両立を目標に患者さんにとって最善な手術を目指しております。

化学療法

術前・術後の補助化学療法ならびに切除不能食道癌に対する化学療法を、入院あるいは外来で行っております。

緩和ケア

外科だけではなく、緩和ケア認定看護師、薬剤師、栄養士などによる緩和ケアチームによる介入を行い、患者さんにとって最善の緩和ケアを目指しております。

良性疾患など

胃粘膜下腫瘍や胃・十二指腸潰瘍などの良性疾患に対する外科治療も行っております。
症例に応じて積極的に腹腔鏡・胃内手術を行っておりますのでお気軽にご相談ください。

下部消化管外科 (小腸、大腸、直腸及び肛門)

外科で扱う疾患としては腸閉塞、小腸癌、急性虫垂炎、結腸・直腸癌、大腸穿孔、痔核(いぼぢ)・裂肛(きれぢ)・痔瘻(あなじ)などです。
比較的小さな結腸、直腸癌には腹腔鏡手術を行い、痛みや苦痛を最小限度にとどめています。
肝臓、肺に転移のある場合、治すことを目指して抗がん剤を用いた積極的な治療を行っています。

小腸疾患

小腸の良性疾患(出血など)や悪性疾患(小腸癌)を扱っています。
これらの疾患においては積極的に腹腔鏡手術を行っています。
腸閉塞症に対してはイレウス管による減圧治療のような保存的治療(切らない治療)から腹腔鏡下での手術治療まで幅広く行っています。
また偽性腸閉塞症の治療も積極的に行っております。

大腸疾患

結腸・直腸癌や炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎及びクローン病)の手術を行っています。
結腸・直腸癌においては適応を決め腹腔鏡手術を行い、痛みや苦痛を最小限度にとどめています。
肝転移や腹膜播種を伴う症例でも合併切除やラジオ波焼灼を併用し根治性を高める手術を行います。
術後の抗癌剤治療や人工肛門のケアにおいてはそれぞれの専門看護師と協力し患者さんのQOLを考慮したフォローを行っています。
炎症性腸疾患の治療においては消化器内科とディスカッションしながら患者さんにもっともふさわしい治療を選択しています。
他には虫垂炎や大腸穿孔など緊急性の高い手術も行っていますが、特に虫垂炎では腹腔鏡手術の適応を広げています。

※QOLとは:Quality of Life(生活の質)という意味の略語です。病気や障害を持ちながら、どれだけの生活の質を保つことが出来るかを考えております。

肛門疾患

痔核(いぼぢ)・裂肛(きれぢ)・痔瘻(あなじ)・肛門周囲膿瘍・肛門狭窄などを扱っています。
特に痔核に関しては根治手術のほか、患者さんのニーズに合わせて切らない治療(四段階注射法)も行っています。

肝胆膵外科(肝臓、膵臓、胆嚢)

胆石症、胆嚢腺筋症など良性胆道疾患をはじめ肝臓癌、胆管癌、胆嚢癌、膵臓癌の悪性疾患を含め肝胆膵領域の多岐にわたる疾患に対して診療を行っています。
がんの中でも治りにくい領域ですが、CT、MRI、PET検査などによる正確な進行度診断をもとにした積極的な外科的切除を中心に、化学療法、ラジオ波焼灼術、肝動脈塞栓療法など手術以外の治療法も行い、患者さんのQOLに配慮した集学的治療を行っています。

※QOLとは:Quality of Life(生活の質)という意味の略語です。病気や障害を持ちながら、どれだけの生活の質を保つことが出来るかを考えております。

肝胆膵の解剖

肝臓疾患

肝臓の悪性腫瘍とは・・・

原発性肝癌:肝細胞癌(95%)、肝内胆管癌(5%)
転移性肝癌:食道癌、胃癌、膵癌、大腸癌などが血液にのって肝臓に転移してきます。手術適応になるのは、ほとんどが大腸癌です。

肝細胞癌

  • 原因:約70%がC型肝炎、約15%がB型肝炎。肝細胞癌の約85%に肝硬変が合併しています。
  • 症状:倦怠感、食欲不振、黄疸、腹水等、慢性肝障害による症状が主体で肝細胞癌自体の特徴的症状はほとんどありません。
  • 診断:画像診断(CT、超音波、MRI)血液検査(腫瘍マーカー:AFP、PIVKA-II)

肝臓がんの治療

肝臓癌に関しては癌の進行度、肝臓の機能と安全性を考慮し、肝切除を中心に、局所療法(ラジオ波焼灼療法)、肝動脈塞栓化学療法などから最適な治療法を選択しています。

腹部CT検査所見

ラジオ波焼灼療法

肝動脈塞栓化学療法(TACE)

がん細胞は肝動脈から栄養を摂取して増殖していきます。したがって、この肝動脈をふさいでしまうと増殖することができずに壊死することになります。
肝動脈をふさぐには、太ももの付け根の血管(動脈)からカテーテルを挿入して肝動脈へ導き、がん細胞に栄養を与えている動脈に血管をふさぐための物質(塞栓物質)を流し込みます。このときに、抗がん剤を注入することが一般的です。

胆嚢疾患

胆石とは・・・

胆嚢の中にできた石を胆嚢結石、胆管にできた石を胆管結石(総胆管結石)、肝臓の中の胆管にできた石を肝内結石といいます。

日本人の胆石保有率は年々増加しており、現在では日本人成人の10人に1人は胆石をもっているとされています。
胆嚢に結石があっても80%の人が無症状で症状が出るのは20%程度です。
結石が胆嚢の出入り口をふさいだり胆嚢管に詰まったりして、胆汁の流れを妨げると症状が起こります。

胆嚢結石の症状

脂肪分の多い食物をとったあとにみぞおちから右肋骨の下あたりの痛みで、背中や右肩のコリや痛みを伴うことがあります。
その状態で胆嚢内に細菌が感染すると急性胆嚢炎となり、高熱を出します。

腹部CTスキャン(冠状面)

胆のう結石症、胆嚢ポリープ、総胆管結石症の治療

胆石症や胆嚢ポリープに対しては体への負担が少ない腹腔鏡下手術を第一選択としています。
総胆管結石を伴っている場合は、手術前に内視鏡での総胆管結石の採石を施行しています。

腹腔鏡下胆嚢摘出術

膵臓疾患

膵癌とは・・・

膵癌は、消化器癌のなかで最も予後不良のがんです。
予後不良の原因としては、後腹膜臓器であるため症状が出づらく早期発見が困難であること。
悪性度が高く2cm以下の小さな癌であってもすぐに周囲の血管、胆管、神経への浸潤やリンパ節や肝臓などへ転移を伴うことが多いからです。

膵癌の症状

初期には無症状のことが多い病気です。
膵頭部癌では、黄疸、灰白色便が特徴のある症状です。
膵管が閉塞すると膵炎を起こしたり、内分泌機能低下で糖尿病になって発見される場合もあります。
膵体部や尾部に発生したがんは、さらに症状が出づらい場合があります。

膵癌の治療

膵癌に対しては積極的に手術を行っております。必要に応じて門脈合併切除も行います。
また癌の進行度、年齢、全身状態等を考慮して化学療法も行っています。

内視鏡外科(胸腔鏡・腹腔鏡下手術)

食道癌

内視鏡治療の適応とならない早期がんや進行がんには開胸、開腹手術だけではなく、胸腔鏡・腹腔鏡手術を積極的に行っております。
胸腔鏡・腹腔鏡手術は、従来の開胸・開腹手術と比べて、患者さんへの侵襲が少なく、早期回復が利点です。

食道良性疾患

粘膜下腫瘍や食道裂孔ヘルニア、食道アカラシアなどの良性疾患は、症例に応じて積極的に胸腔鏡・腹腔鏡手術を行っておりますのでお気軽にご相談ください。

胃癌

内視鏡切除の適応とならない早期がん症例に対しては、腹腔鏡(補助下)胃切除術を積極的に行っております。

胃良性疾患

胃粘膜下腫瘍など、症例に応じて積極的に腹腔鏡手術や胃内手術を行っておりますのでお気軽にご相談ください。

大腸癌

結腸・直腸癌においては適応を決め腹腔鏡手術を行い、痛みや苦痛を最小限度にとどめています。

大腸良性疾患

急性虫垂炎、大腸憩室症など、症例に応じて積極的に腹腔鏡手術を行っておりますのでお気軽にご相談ください。

胆石症

原則、4孔による腹腔鏡による胆嚢摘出術を行っております。
症例、患者さんのご希望に応じて単孔式(お臍のキズのみ)の腹腔鏡手術を行っております。

鼠径ヘルニア

症例、患者さんのご希望に応じてメッシュ(人工膜)を用いたテンションフリー手術を腹腔鏡手術で行っております。
傷も目立たず、術後の腫れも少ない方法です。

※テンションフリー手術とは:弱くなった筋肉にメッシュという人工の網(ポリプロピレン製)をあてて補強をします。 術後の「つっぱり」感が少ない方法です。

乳腺・甲状腺・下肢静脈外科

乳腺外科

乳房の全ての病気を対象としています。乳癌、乳房良性疾患、乳房炎症疾患の診断と治療を行っています。
ハイエンド超音波、マンモグラフィー、MRI等の精密検査と生検による迅速な診断をしています。
乳癌手術は、可能な限り乳房温存手術を行い、不必要な腋窩リンパ節郭清(手術で乳房周囲のリンパ節をきれいに取り除くこと)を省くためにセンチネルリンパ節生検を取り入れております。
年間約50例の乳癌手術を行っています。
当科はさいたま市の乳がん健康診査実施医療機関です。
市の乳がん検診を当院で受けていただいて異常が見つかればそのまま精密検査を行い、スムーズかつ迅速に手術など治療を受けられる、さいたま市では数少ない乳がん専門施設です。

甲状腺外科

頸部疾患に関して診断治療を行っております。
初診時に必ず超音波検査を行い、必要があれば穿刺吸引細胞診まで行い診断の迅速化に努めています。
甲状腺腫瘍に関しては、手術だけでなくエタノール注入など個々の病状に合わせた低侵襲治療も行っております。

下肢静脈外科

下肢静脈瘤、深部静脈血栓症、浮腫の診断治療を行っております。
下肢静脈瘤は年間約100例弱の手術を行っております。状態に合わせて入院、日帰りでの手術を行っております。
手術以外の治療法もありますので、お気軽にご相談ください。

活動実績

   2022年度の新入院患者数は992名で前年比113.6%(+119名)でした。

   手術件数は総数643件で前年比110.3%(+60件)と増加し、全身麻酔例は589件で前年比113.7%(+71件)でした。内視鏡外科手術は356件で前年比110.9%(+35件)と増え、総手術件数の半分以上(55.4%)を占めています。緊急手術は125件(前年対比-25件)でした。手術の主なものは胃癌切除33例(うち腹腔鏡24例)、大腸癌切除86例(腹腔鏡61例)、胆嚢摘出114例(腹腔鏡112例)、鼠径部ヘルニア105例(腹腔鏡59例)、急性虫垂炎70例(腹腔鏡68例)、乳癌75例でした。胆嚢摘出と虫垂炎手術はほぼ100%鏡視下手術で行い、胃癌72.7%、大腸癌も70.9%と鏡視下手術が増えました。食道癌1例(胸腔鏡)、膵頭十二指腸切除6例、肝切除4例でした。手術数もコロナ禍以前の水準に戻りました。

   開院当初以来の浦和医師会・洪 淳一先生がオープンシステムを利用してクリニック患者さんの乳癌手術を行っており今年度は40例手術をされました。

   近年外科手術ではナビゲーションサージャリー(=術前・術中に得られた情報や画像をもとに行わる手術)が注目されており、当科ではICG(インドシアニングリーン) を用いた蛍光ナビゲーションによる内視鏡外科手術システムを導入しております。同手術は「見えないものを視覚化する」技術であり、1)吻合・再建における血流評価、2)癌の識別、3)リンパ節郭清におけるリンパ節の同定・リンパ管造影、4)胆道系手術における胆管の確認などに応用しており、より精緻な手術を行っております。

   平日の朝は全員集合でミーティングを行います。朝礼の報告、重症患者の確認、日々の申し送り、1日の全員の予定を確認し共有しております。

   また週1回、外科医のみならず多職種(手術室看護師、病棟看護師、消化器内科医、放射線科医、病理医等)で術前、術後カンファランスを行っております。

 

   医師の働き方改革関連の取り組みとして2022年度より主治医制からチーム制に変更し分業制度を積極的に導入しました。消化器外科医は6名で、2チームにしました。主治医をチームで支えることも目的としています。休日は当番医(当直か待期DR)が回診をしております。外科救急当番を初期研修医と常勤医でペア対応とし、院内外の救急患者の受け入れを円滑にしました。従来行っていた時間外のカンファランスは勤務時間内に終えられるようにしました。毎日の外科カンファランス内容はクラウドサービス(LINE WORKS)を利用し記録に残して情報共有の徹底を図っております。

地域医療連携関連では、2022年11月10日には大宮医師会外科医会学術講演会として第3回さいたま消化器がんセミナーを開催しました。一般講演として薬剤科・芝崎係長に「緩和薬物療法認定薬剤師が伝えたいがん疼痛・症状緩和のポイント」の発表をいただきました。特別講演では日本医科大学武蔵小杉病院 消化器外科 准教授 水谷聡先生に「局所進行切除不能膵臓癌(URLA)に対する conversion surgeryの現状と当院の取り組み」と題しまして膵癌の外科手術の講演をしてもらい、その卓越した手術手技を披露して頂きました。Webにて70名ほどの参加がありました。

2022年12月23日には第5回消化器疾患医療連携の会をハイブリッド開催しました。この会は医師会の先生方とまさにface to faceで連携を図ることを目的とした会です。消化器内科・篠崎博志先生に「胆膵疾患の内視鏡診断と治療」、外科・渋谷肇先生に「外科と消化器内科で連携している大腸がんイレウス治療」を発表してもらい、最後に消化器病診連携に関してディスカッションを行い有意義な会でした。

現地20名、Web28名、計48名参加でした。

今後の課題・目標

 今年も昨年目標とした「安全、安心の医療を提供する」ということをさらに充実させて参ります。患者さんの立場に立った医療を心がけて、難疾患にも果敢に挑戦し、地域医療の充実に資することを目標としていきます。
救急医療の充実
  • 開院以来継続している消化器・一般外科に対する緊急手術を含め,24時間365日対応できる体制の維持。
患者さんのための治療
  • 医学的根拠に基づいた医療
  • 患者さんひとり一人の生活を考慮した最適の治療
  • 禁煙化率100%
  • 患者さんに分かり易い治療、クリニカル・パスの提供
地域医療連携の強化
  • 地域に根ざし近隣の医療機関と力を合わせて行う医療
  • 各医師会と積極的な関わり合いをもち、研究会や懇親会への参加。
  • 歯科医師会との連携を図り、周術期口腔ケアのさらなる実施推進。
特色ある医療の推進
  • 内視鏡外科手術の発展。Needlescopic Surgeryの推進。NBIを利用した更なる精緻な手術。
スキルアップ、資格取得の促進
  • 各スタッフの一般臨床および専門領域の知識、技術を高めながら、さらなる専門性の追求、一層の医療レベル向上を目指す。
  • 専門医取得の促進。
チーム医療の強化
  • 責任所在を明確とした主治医制を基本としながらも複数スタッフでの入院患者治療の実施。
  • 緩和ケアチームとの協力による緩和ケアの充実。
  • 認定薬剤師、看護師との共同による安全で効果ある化学療法の推進。
  • 感染管理認定看護師との共同によるSSIの減少とサーベイランスの強化。
外科専門医制度
  • 外科専門医研修基幹病院の日本医科大学、帝京大学と協力し、外科専攻医の教育充実。
臨床研究の推進
  • 内視鏡外科手術手技の改良、開発。
  • 日本医科大学消化器外科との共同研究「癒着防止フィルムは腸閉塞を減少させるか」。
  • 絞扼性腸閉塞やがん手術においてICGを利用した血流・リンパ流の有効性を検討。
外科医師の働き方改革
  • 診療体制を維持しながら、当直明けの勤務改善。
  • 初期研修医の勤務時間管理の徹底。
  • 定時退社の推奨。
  • 休日夜間を含めたバックアップ体制の充実。
以上を目標にして1年間取り組んで参ります。

研究・学会発表

学会発表

  1. パネルディスカッション
    塩谷猛、小峯修、渋谷肇、久保田友紀、南部弘太郎、渡邉善正
    一般急性期病院での働き方改革 -対応と課題- 第59回日本腹部救急医学会総会
    2023.3.10
  2. 一般講演
    安康勝喜、渡邉昌則、南村圭亮、原敬介、久下恒明、小川祐太郎、松永龍
    非還納性膀胱ヘルニアに対して腹腔鏡補助下鼠径部切開法(Hybrid法)を施行した1例. 第20回日本ヘルニア学会学術集会
    2022.6.4
  3. 南部弘太郎、塩谷猛 、小峯修、渡邉善正、渋谷肇 、久保田友紀、大野航平、山田太郎、島田裕司、大石卓爾
    保存的治療で改善した腹腔内遊離ガスを併発した胃壁内気腫の1例 第48回日本外科系連合学会学術集会
    2022.7.1
  4. 島田竜
    緊急手術後に追加切除を行った盲腸癌リンパ節転移の1例. 第44回日本癌局所療法研究会
    2022.7.1
  5. 島田竜
    術前診断が困難であった虫垂癌両側卵巣転移の1例. 第77回日本消化器外科学会総会
    2022.7.1
  6. 島田竜
    当院における閉塞性大腸癌に対する術前大腸ステント留置術の短期治療成績. 第97回大腸癌研究会学術集会
    2022.7.8
  7. 大野航平、小峯修、塩谷猛、久保田友紀、渋谷肇、渡邉善正、南部弘太郎、山田太郎、内間久隆
    分節性動脈中膜融解症(SAM) 3例の検討. 第39回埼玉県外科集談会
    2022.11.19
  8. 南部弘太郎、塩谷猛、小峯修、渡邉善正、渋谷肇 、久保田友紀、大野航平、山田太郎、島田裕司、大石卓爾、内間久隆
    S状結腸癌に合併し術前診断した膵頭部近傍paragangliomaの1例. 第84回日本臨床外科学会総会
    2022.11.24
  9. 大野航平、久保田友紀、渋谷肇、渡邉善正、南部弘太郎 、山田太郎、小峯修、塩谷猛、内間久隆
    分節性動脈中膜融解症(SAM)により大網出血をきたし緊急手術を施行した1例. 第84回日本臨床外科学会総会
    2022.11.26
  10. 池畑泰行、金城信哉、鈴木悠介、添田成美、堀川昌宏、清川貴志、外村修一、深川剛生
    膝紡錘形細胞肉腫の胃転移小腸移転の1例. 第95回日本胃癌学会総会
    2023.2.25
  11. 塚本健太、塩谷猛、小峯修、大野航平、久保田友紀、渋谷肇、渡邉善正、南部弘太郎、山田太郎、山中健一、篠﨑博志、新畑博英
    内視鏡・腹腔鏡アプローチにて採石したBouveret症候群の1例. 第57回大宮医学会総会
    2023.3.11

論文

  1. Katsuyoshi Ankoh, Seiichi Shinji, Takeshi Yamada
    et al. A Rapidly Growing Small-Intestinal Metastasis from Lung Cancer. Journal of Nippon Medical School
    2022;89(5):540-545

書籍

  1. 塩谷猛, 渋谷肇, 小峯修, 久保田友紀, 山川珠実, 宮田敏弥, 大野航平, 南部弘太郎, 渡邉善正, 山田太郎, 渋谷哲男
    【術前画像の読み解きガイド-的確な術式選択と解剖把握のために】小腸・大腸 良性疾患 虫垂炎
    臨床外科 77巻11号 Page156-162 2022.10

学会・研究会座長

  1. 塩谷猛
    一般演題54 肝. 第84回日本臨床外科学会総会
    2022.11.24

各種講演会

  1. 島田竜
    切除不能結腸・直腸癌における薬物療法.CRCエキスパートセミナー
    2022.6.21
  2. 渋谷肇、大野航平、久保田友紀、小峯修、渡邉善正、南部弘太郎、山田太郎、塩谷猛
    外科と消化器内科で連携している大腸癌イレウスの治療.第5回消化器疾患医療連携の会
    2022.12.23
  3. 小峯修
    コロナ禍におけるがん診療の取り組み.  第12回埼玉県がん診療連携協議会合同キャンサーボード
    2023.3.25

院内講演会

  1. 久保田友紀
    急性虫垂炎に対する当科の治療方針. 第105回病診連携ケーススタディ
    2022.5.9
  2. 塩谷猛
    直腸がん術後多発肺転移症例に対する化学療法について(経口5FU系で腎不全発症の既往あり). キャンサーボード
    2022.6.25
  3. 小峯修
    27年前の直腸腫瘍手術後吻合部に発生した癌が瘻孔形成し骨盤内浸潤した症例. 第1回キャンサーボード
    2022.7.30
  4. 山田太郎
    当科における男性乳癌症例の経験. 第109回ケーススタディ
    2022.10.17
  5. 小峯修、芝﨑由美子、小林律子
    第2回院内緩和ケア研修会
    2022.12.15
  6. 大野航平
    食道癌を合併したS状結腸癌術後肝転移の治療方針について. 第4回キャンサーボード
    2023.1.28
  7. 大野航平
    S状結腸手術時の郭清リンパ節に前立腺癌転移を認めた三重複癌の一例. 第111回ケーススタディ
    2023.2.13

学校等講義

  1. 塩谷猛
    消化器外科総論1. 大宮医師会看護専門学校 外科講義
    2022.12.6
  2. 塩谷猛
    消化器外科総論2. 大宮医師会看護専門学校 外科講義
    2022.12.19
  3. 渋谷肇
    下部消化器外科.大宮医師会看護専門学校 外科講義
    2022.12.20
  4. 小峯修
    上部消化管外科.大宮医師会看護専門学校 外科講義
    2022.12.21
  5. 南部弘太郎
    肝胆膵外科.大宮医師会看護専門学校 外科講義
    2022.12.22
  6. 島田竜
    統合講義(消化管)腸腫瘍の外科治療.帝京大学医学部2年生
    2022.12.22